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Please use this identifier to cite or link to this item: http://hdl.handle.net/10285/2823

NII Resource type: Thesis or Dissertation
Title: 父親の早期産児との「Paternal Attachment」の理論の生成
Other Titles: The Creation of Theory of "Paternal Attachment" between Fathers and their Preterm Infants.
Authors: 関森, みゆき
Advisor: 及川, 郁子
Keywords: 父親
理論生成
早期産児
Paternal Attachment
Issue Date: Sep-2007
Publisher: 聖路加看護大学
Abstract: 研究課題の背景  家族の形態や機能が多様化している現代は、我が子の誕生によって初めて子どもと接するという親が多く、被虐待児の増加など子育ての難しさが表面化してきている。さらに、父親の積極的な育児参加が重要となってきており、子どもを養育していく父親となることは、以前にも増して厳しい状況を迎えている。  親と子の関係は、相互に作用しながら育て・育てられる関係にあると考えられ、早期からの相互作用が必要である。早期産児とその親の場合は、子どもの機能的な未熟性や誕生直後の状態等、さまざまな要因により肯定的な親子関係の構築につながる接触や、親子間の相互作用の成立が難しい。親子関係においては最初のつまずきが克服されないと、それが後まで影響を及ぼすため、父親にとっては子どもとの出会いに始まる新生児期は、子どもとの関係構築の基礎として重要な時期であると考える。まして、関係が築きにくいといわれている早期産児の場合はなおさらである。しかしながら、父親を対象とした研究は極めて少ない。 早期産児の父親に対して、親子関係の構築につながる看護を行うためには、新生児集中治療室(以下、NICU)入院中において父親が築いている早期産児との関係性を構造に示し、理論化することが課題と考え、本研究を行った。 研究目的 本研究の目的は、父親が築いている早期産児との関係性を理解し、父親に対する看護援助のあり方を検討するために、早期産の子どもの誕生直後から新生児期における、父親の早期産児との『Paternal Attachment』の理論を生成することである。 研究方法 本研究は、データ収集と分析においてはグラウンデッドセオリーアプローチに基づいて行い、アタッチメント理論を理論的前提とした。  研究対象は、初めての子どもが在胎週数35週未満の早期産児のため、NICUに入院中の父親13名であった。  データは、面会後の面接および面会時の観察により収集した。全対象者に対して複数回の参加観察と、2回以上のインタビューを行った。インタビューでは対象者の同意を得た上で録音した。 倫理的配慮  データ収集は研究の主旨を説明し、承諾が得られた2施設で実施した。対象者へは、研究説明書を使用し、次の点を説明し同意書を交わした。1)対象者は自由意志で研究に参加することができること、2)インタビューの逐語録は本研究に限って使用すること、3)情報のプライバシーを厳守すること、4)対象者の匿名性を守り、学術雑誌等に公表する場合はそれらが特定できないようにすること なお、本研究計画は聖路加看護大学研究倫理審査委員会における審査により、承認を受けた(承認番号:06-007)。 研究結果 1.対象者の属性 対象者の年齢は26歳から48歳、平均36.5歳であった。子どもの状態では、在胎週数は21週6日から34週6日、平均31週3日であり、出生体重は508gから2254g、平均1526gであった。1名を除き、対象者の子どもは母体搬送後の帝王切開術による誕生であり、うち7名が緊急帝王切開術であった。 2.分析結果  分析の結果、早期産児の父親の新生児期における『Paternal Attachment』の様相は、【安心感への依拠】【無事の誕生からの感動】【早期産で誕生した我が子への愛情】【父親としての意識】の4つの概念によって説明することができた。  【安心感への依拠】  【安心感への依拠】とは、父親が自分の子どもが早期産で誕生するかもしれないと知らされたことによって生じた不安感を軽減させ、安心感を確保するために模索しながら精神的な安定を図ろうとし、父親なりの小さな安心感を積み重ね、不安に向かっていこうとする取り組みの姿勢である。 予定日よりかなり早く産まれるということは、妻の出産、子どもの誕生と生存といった[早期産の不安]を生じさせ、精神的に不安定な時間を与えるものであった。しかし、男性は予想外の出来事に動揺してばかりはいられず、妻を支えていく夫としての役割や会社での責任を果たさなければならないと強く思い、何とか精神的な安定を得たいと望んでいく。つまり、常に安心できる何かを求めており、それが【安心感への依拠】という取り組みのあり様であった。これは父親にとってはまさに、アタッチメント理論における『安全基地』のような働きをしているものであると解釈できる。このような取り組みがあるからこそ、自分自身の立場や役割、使命が全うでき、不安の原因である子どもに向かっていけるのであり、心の支えにしているものであろう。特に、子どもが誕生するまでの不確かな事柄や、誕生直後の子どもの状態が不安定な時期の不安感に対する際の支えであった。 【安心感への依拠】は、[早期産の不安]に対する取り組みであるため、子どもが誕生するまでの不確実な事柄や、誕生直後の子どもの状態が不安的な時期など、それぞれの父親にとっての[早期産の不安]が解消されるまで継続する。  【無事の誕生からの感動】 【無事の誕生からの感動】とは、子どもが誕生するまでの父親に渦巻いていた、見えないもの、どうなるのか分からない不確かな事柄への不安が、誕生してきた子どもの確かな存在により、実際に自分自身で確認できたという安堵から生じている感情であった。 ここで得られた安心感は、子どもの様子を見聞きし、それを父親なりに解釈しながら受け入れることによって生じているものであり、子ども側からの表示を父親なりに解釈するという点において相互作用の成果と考えられる。このような感動を得ることには、誕生した子どもの状態による時期の違い、父親の不安内容やその確認方法による違いが生じており、父親にとっての感動にはそれぞれのあり様がある。 また、【無事の誕生からの感動】は、父親の【安心感への依拠】という取り組みがあって得られたものではあるが、ここでの[安心感の芽生え]や[喜び・嬉しさ]という感動が、【早期産で誕生した我が子への愛情】につながり、今後の父親の子どもへの思いや自分自身のあり方など、2者の関係性に影響を及ぼすものと考えられた。  【早期産で誕生した我が子への愛情】  【早期産で誕生した我が子への愛情】とは、【無事の誕生からの感動】に続いて生じる父親の子どもへの思いと、その子どもへの愛情の高まりを指し、[我が子という実感]と[我が子への感情の高まり]によって構成されている。  出産の時を迎えるまで、あるいは子どもとの対面までに感じていた大きな不安が、目の前に存在する子どもの様子や誕生したことへの感動により軽減し、[我が子という実感]が湧き上がってくる。また、[我が子]であると思えることにより、[我が子への感情の高まり]が出現してくる。これらの感情が湧き上がる前提には、子どもの誕生による不安感の軽減、安心感の高まりと、その後の子どもとの関わりによって生じる安心感の確保の連続が必要である。言い換えるならば、父親自身の不安感をカバーして余りある安心感の確保によって、子どもへの感情の高まりは存在しうる。また、不安の理由、安心できる事柄は子どもの成長に応じて新たな内容へと変化しているが、最初に得られた【無事の誕生からの感動】の[安心感の芽生え]は揺るがされるものではなく、その上に新たな安心感が積み重ねられていく。 また、【早期産で誕生した我が子への愛情】が高まっていくことで、父親自身に我が子を育てていくという責任感も同時に強まっていくものであった。  【父親としての意識】  【父親としての意識】とは、子どもを持つことを決断し、妻の妊娠により[夫としての責任の再構築]と[父親となる覚悟]を決めることから始まる。サブカテゴリーとして、[夫としての責任の再構築][父親となる覚悟][父親となった実感][家族関係への関心]が抽出されている。  妊娠経過において早期産の危険性が生じ、医師から説明を受けたことによって、大変な出産を迎える妻を支えサポートしようとする[夫としての責任の再構築]と[父親となる覚悟]を強めていく。[早期産の不安]に強くさいなまれている時期には、安心感を求める【安心感への依拠】という姿勢の影響を受ける。また、それまでの不安が強いほどに、子どもの誕生によって生じた[安心感の芽生え]により【無事の誕生からの感動】がもたらされ、その感動に続いて起こる【早期産で誕生した我が子への愛情】の高まりに応じて、[父親となった実感]が発生し、[家族関係への関心]も生じてくる。いずれにせよ、父親たちは[父親となった実感]を求めながら、子どもと関わることで【父親としての意識】を獲得していく。  カテゴリー間の関連性  早期産児の新生児期における『Paternal Attachment』は、子どもを持つことを決意し、妻の妊娠判定によって【父親としての意識】をもとうとすることから始まる。その中で、妻に早期産の危険性が出現すると父親たちは強い不安感を抱き、自分自身の役割を果たすための精神的な安寧を求める【安心感への依拠】という取り組みを始める。特に、子どもが誕生するまでの不確かな事柄による大きな不安感がある時期には、【安心感への依拠】によって、子どもが早期産で誕生することを覚悟しようと努力し、自分の役割、責任の再構築を続けることで自分を鼓舞しながら、子どもの誕生を迎える。 産まれてきた子どもとの対面により、目の前に存在する子どもの様子を見たことで、【無事の誕生からの感動】が得られ、安心感が高まる。子どもの誕生後には、これまでの【安心感への依拠】による精神的な支えから、子どもが父親にとって安心感を与える存在となる【無事の誕生からの感動】による安心感を拠り所としていく。父親は目の前に存在する子どもとの相互作用を通じて、我が子と受け止め、自分が愛情を注ぐ対象であると認知していく。さらに子どもとの相互作用の深まりの中で我が子への愛情が芽生え、【早期産で誕生した我が子への愛情】を得ていく。我が子への愛情が高まっていくにつれ、自分が父親になったと思える【父親としての意識】も明確となっていく過程であった。 結論  新生児期における父親の早期産児との『Paternal Attachment』は、【安心感への依拠】と【無事の誕生からの感動】という父親自身の安心感を基盤に、父子間に営まれる相互作用を通じて【早期産で誕生した我が子への愛情】という子どもへの情緒的な絆を結び、【父親としての意識】を獲得していく過程として理論化される。なかでも、子どもの誕生前および誕生後にも不安が強い時期における【安心感への依拠】と【無事の誕生からの感動】は、この時期の『Paternal Attachment』の形成過程において中核的な概念と考えられる。  【安心感への依拠】および【無事の誕生からの感動】は、アタッチメント理論の主要概念である『安全基地』の意味合いがあり、父親が早期産という危機的状況の中で子どもに近づいていける基盤となるものであると考えられる。【早期産で誕生した我が子への愛情】は『アタッチメント対象』を認識し、その対象との緊密な情緒的結びつきを示している。また、【我が子への愛情】によって父親のアタッチメントの内的ワーキングモデルは再形成され、【父親としての意識】が高まっていく。これらのカテゴリーは、父親の獲得した『安全基地』を基盤とした父子間に営まれる相互作用によって生じ、育まれるものと考えられる。  看護実践においては、【安心感への依拠】【無事の誕生からの感動】【早期産で誕生した我が子への愛情】【父親としての意識】という概念は、父親が築いている子どもとの関係性の状況を理解し、分析するための視点として活用可能である。また、周産期における父親の存在は母親と子どものサポーターではなく、父親も早期産の子どもとの関係を築くうえで困難を抱え、援助を必要としているクライエントであることを意識し、父親の気持ちに寄り添った援助を講じることが求められている。  今後は、さらに本研究の対象者と同じあるいは異なる特性を有するNICU入院児の父親を対象とした研究を積み重ねることにより理論を精錬し、新生児看護領域における父子関係構築に関する知識を深め、発展させていく必要がある。
Degree field : 博士(看護学)
URI: http://hdl.handle.net/10285/2823
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