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Please use this identifier to cite or link to this item: http://hdl.handle.net/10285/1269

NII Resource type: Thesis or Dissertation
Title: 気管支喘息患者のボディイメージ
Other Titles: Body Image in Bronchial Asthma Patients.
Authors: 藤崎, 郁
Author-transcription: フジサキ, イク
Advisor: 堀内, 成子
Keywords: Body image
Bronchial asthma
Somatosensory amplification
An investigating method or the measure : Somatosensory Amplification Scale (SSAS)
Body Image Assessment Tool (BIAT)
Asthma Health Questionnaire -33, Japan (AHQ-33J)
Issue Date: Mar-2004
Abstract: 1.研究の問いと目的  本稿では、慢性疾患である成人喘息患者のボディイメージに関して検討を行う。研究に先立ち、喘息患者には他の慢性疾患との比較において、以下のような特徴的な状況があると考えられた。  その第一は、慢性疾患であるにもかかわらず、喘息が潜在的に突発的な死のリスクを抱えて、つねに死の危険性を意識しなければいけない疾患であることである。第二には、喘息患者の多くが、「発作」状態とそうでない状態とを日常的に繰り返し経験しており、その上、発作の出現状況や日頃の調子が、気候など自分の努力の及ばないコントロール不能な外的因子によって大きく左右されやすいことである。そして第三には、治療の中心である薬剤の種類が多く、その使用方法も長期に常用するコントローラーと発作時に頓用するレリーバーと分かれていたり、剤型も経口薬、吸入薬、貼付薬、注射・点滴薬と非常にバリエーションがあって複雑であるということである。  結果として、喘息患者は、身体感覚を頼りに、自分の身体状況についての監視と調整とをつねにしていかねばならず、そのため、喘息患者たちのボディイメージの在りようには、そのような状況にない人々に比べて一定の特徴があるのではないかと推察された。  以上のような問題意識から、本研究では、成人気管支喘息患者の主観的健康やQOLについての理解を深め、それに対するケアについて考えていくための試みとして、喘息患者のボディイメージに生じる問題の特徴を調べるとともに、それに関与すると思われる身体感覚の感受性や喘息特有に生じる身体状況、生活状況等についても実態を把握し、その関係性について検討する。   2.研究の枠組み  概念開発の作業を踏まえて、病者のボディイメージに生じる問題を「ボディイメージ混乱body image disturbance」として捉えた。ボディイメージ混乱とは、個人の健康に問題を生じさせる可能性の高い、身体状況に対する知覚の混乱と認知的評価の傾向と操作的に定義される。その下部構造には、「身体カセクシス」、「身体コントロール感の低下」、「身体尊重の低下」、「身体境界の混乱」、「身体の離人化」、の5つの下位概念を設定している。  「身体カセクシス」とは、自分の身体状況に対するこだわりや関心が極端に強く、そのことで自分でも違和感や不安感を感じている状態である。「身体コントロール感の低下」とは、身体状況の不安定さに自分自身が振り回され、身体の斉一性や恒常性を信頼することができなくなっている状態である。「身体尊重の低下」は、自分の身体状況に満足できずに身体を大切なかけがえのないものと認識できなくなった状態、「身体境界の混乱」は、自分の身体とその外界との透過性が亢進し、その境界が一定でないとか、境界認知があやふやになるなどの違和感を感じている状態、「身体の離人化」は、自分の身体やその一部が自分のものでないように感じ、異常知覚をともなった違和感や異物感を体験している状態を指している。そのうち「身体境界の混乱」は、喘息患者に起こるボディイメージの問題として想定し難いことから、本研究の枠組みからは除外した。 3.研究方法  成人喘息患者に対して自記式調査票を用いて横断的調査を行った(調査1)。また、非喘息者にも同様の調査を行い(調査2)、2群の比較結果を手がかりとしながら、喘息患者のボディイメージについて検討した。 1)対象  対象者は、喘息のために呼吸器内科外来に通院中の20歳以上の患者で、喘息発症から半年以上を経た者とした。対照群は、喘息に罹患しておらず、入院中でない人たちとした。 2)測定する変数と測定用具  喘息患者群用の調査票-BAと対照群用の調査票-Cを作成した。基本的背景の項目のほか、調査票-BAは「SSAS」、「BIAT-22」、「喘息特有の身体状況や生活状況等の指標」からなり、調査票-Cは「BIAT-22」、「SSAS」からなる。 A.身体感覚増幅度  身体感覚の感受性は、Barskyらの「身体感覚増幅somatosensory amplification」という概念で捉えた。身体感覚の増幅とは、ふつうなら気にならない程度のごく弱い不定期な内臓感覚や体性感覚を強く感じ、過剰な注意や警戒の念をもって詮索したり、病的なものと評価する傾向であり、『身体感覚増幅尺度Somatosensory Amplification Scale(SSAS)』(村松翻訳版)で測定する。SSASは10項目の自記式尺度で、得点が高いほど身体感覚の感受性が高いことを示す。 B.ボディイメージ混乱度  先に述べた本研究の枠組みをもとに、「ボディイメージ混乱」の度合いを『Body Image Assessment Toolの22項目版(BIAT-22)』で測定する。BIAT-22は、①身体カセクシス(7項目)、②身体の離人化(4項目)、③身体コントロール感の低下(5項目)、④身体尊重の低下(6項目)の4下位尺度からなる自記式尺度で、得点が高いほどボディイメージに大きな問題があることを示す。 C.喘息特有に生じる諸状況の指標  喘息によって誘発される喘息患者特有の身体状況や生活状況等を測定する用具として、『Asthma Health Questionnaire-33,Japan(AHQ-33J)』を部分的に用いた。AHQ-33Jは、喘息患者の疾患特異的QOLを測定するために開発された尺度であり、①喘息症状(8項目)、②感情面(8項目)、③活動の制限や困難(3項目)、④喘息症状の増悪因子(8項目)、⑤社会活動の制限(4項目)、⑥経済的側面(1項目)、⑦Global QOL(1項目)の7下位尺度で構成される。得点が高いほどQOLの自己評価が低いことを示す。今回は、このうち、喘息特有の身体状況の指標として①と③を、身体と環境との関係性の指標として④を、社会的生活状況の指標として⑤を、心理的状況の指標として②を用いた。 3)データ収集  調査1では、調査協力の得られた施設において、患者の外来診察時に担当医師から調査の説明と依頼を行った。同意が得られた場合に限り、医師は診療記録を参照しながら基本的背景の一部に記入し、その上で調査依頼書と調査票-BA、切手添付済み返信用封筒一式を患者へ手渡した。患者はそれを自宅へ持ち返って記入し、研究者宛に郵送した。  調査2では、複数の施設や個人の協力を得て、職員やその家族らへ調査依頼を行った。承諾が得られれば、調査依頼書および調査票-C、切手添付済み返信用封筒一式を配布し、研究者宛に郵送を依頼した。 4)分析方法  統計ソフトSPSS 11.5を用いた。①最初に、記述統計量や度数分布表をもとに喘息患者の基本的背景の特徴を検討した。②次に、喘息患者群と非喘息者群のSSASとBIAT-22の得点について差の検定を行い、喘息患者と非喘息患者の身体感覚増幅度とボディイメージ混乱度について比較した。③次に、BIAT-22値に基準値を設定して喘息患者群のケースをボディイメージ混乱群と正常群に分け、BIAT-22、SSAS、喘息特有の諸状況の指標、基本的背景項目の得点について群間の差の検定を行い、ボディイメージ混乱度の高い喘息患者の特徴を探索した。④最後に、喘息患者群のBIAT-22、SSAS、喘息特有に生じる諸状況の指標について項目間の順位相関係数を算出し、それらの比較から、喘息患者に表れるボディイメージ混乱の特徴やそれぞれの関係性について検討した。 5)倫理的配慮  調査は対象者のプライバシーや匿名性に配慮して無記名で行った。収集したデータは調査以外の目的で利用しないこと、分析終了後はただちに破棄することを約束した。調査1では、患者が協力依頼のできる心身の状態であるかどうかは担当医が判断した。調査協力の依頼が医師からの強制にならないように、最終的な調査票送付は本人の自由意思に委ね、調査票を返送したかどうかは医師に報告しなくてよいことと、協力の諾否によって提供される医療や医師との関係には影響がないこととを、口頭および文書で伝えた。調査2の場合も同様に、上司や同僚や家族といった依頼者からの強制にならないように配慮した。  以上の事柄を研究計画書に含め、2002年度聖路加看護大学研究倫理審査委員会の承認を経て、研究に着手した。 4.結果  調査1では、11施設の964人に調査票を配布し、403人から回収を得た(回収率41.8%)。そのうち20歳未満のケースと未記入項目のあるケースを除いて367人を分析の対象とした。調査2では、6施設および14個人に調査を依頼し、617人から調査票の回収を得た(配布数780、回収率79.1%)。そのうち595人を分析の対象とした。 1)喘息患者群の基本的背景  喘息患者群は男171人、女196人、平均年齢は55.8歳±16.0で、高齢者が多かった。発症年齢の最頻値は45歳であり、0~10歳の小児期に発症した群と、45から50歳をピークとした成人期に発症した群の2峰性に分かれた。通算罹患年数は平均17.9年±12.6と、療養は長期であった。  重症度分類では、軽症間欠型step1が18.3%、軽症持続型step2が37.9%、中等症持続型step3が34.3%、重症持続型step4が9.5%であった。既往では、54.8%が喘息による入院の経験をもち(うち複数回は37.0%)、19.9%が意識消失、9.0%が挿管の経験を有していた。  現在の状況では、「とくに症状なし」と答えた患者は33.2%しかおらず、ほぼ毎日何らかの症状がある人が10.9%、週に数回程度の症状を自覚する人が12.8%、月に1~数回程度が43.1%と、多くの人たちが日常的に喘息症状を自覚していた。また、ここ半年間で約3割の患者が予約外受診を要する重症発作を起こしていた。  吸入ステロイドは91.3%の患者に処方されていた。経口ステロイドを処方されている患者は25.3%で、うち頓用は12.8%、常用は12.5%であった。それらに加え、ステロイド以外の薬が1人平均2種類程度処方されていた。  受診や服薬のコンプライアンスに関しては、ほぼ95%の患者が良好であった。ソーシャルサポートについては、療養生活の実質的な支援者である道具的サポートも、心の拠り所となる情緒的サポートも、「いる/たぶんいる」と回答した患者はいずれも7割程度にとどまった。 2)喘息患者群と対照群の比較  喘息患者群との比較に際し、対照群595人の中から喘息患者群の年齢と性別にマッチする対象者を無作為に選んだが、60歳代以降については十分な対象者数が得られておらず、年齢の条件を揃えるために両群とも60歳以下に限定して分析を行った。対象者は、喘息患者群203人(男97人、女106人)、対照群210人(男104人、女106人)であった。 ① 身体感覚増幅度  SSAS得点の正規性と信頼性係数を確認し、年齢を共変量とした群(喘息の有無)×性別の二元配置分散分析を行った。また、喘息以外の疾患による影響を想定して、非喘息者群を「①いずれの疾患でも通院していない群」と「②喘息以外の疾患で通院している群」の2群に分け、喘息患者群を「③喘息のみで通院している群」と「④喘息およびそれ以外の疾患で通院している群」の2群に分けて、その4群の得点を比較した。  結果は、いずれにおいても、群と性別に交互作用を認めず、群の主効果と年齢の主効果はいずれも有意でなく、性別の主効果のみが有意であった(p=.000)。つまり、身体感覚増幅度は、喘息やそれ以外の疾患の有無によって差はなく、男性に比べて女性のほうが高く、年齢による影響は受けない因子であった。 ② ボディイメージ混乱度  BIAT-22とその下位尺度の得点では、分布の正規性が棄却された。他の疾患による影響を排除し喘息による影響だけを比べるために、先に設定した①~④の群のうち①と③の2群のデータセットを用いて、喘息患者と非喘息者のボディイメージ関連の得点を比較した。分析に先立ち、両群とも性別比がほぼ1対1であり、年齢分布に有意差が認められないことを確認した。  Mann Whitney U検定の結果、喘息患者はそうでない人たちよりボディイメージ混乱度が高く(p=.000)、4下位尺度すべてにおいても同様の結果であった(p<.01)。 3)喘息患者におけるボディイメージ混乱群とボディイメージ正常群の比較  非喘息者595人のうち、上記①群の439人のデータをもとに基準値を設定した。BIAT-22値の男女別の[平均値±標準偏差]値を暫定的な基準値として配点を行い、喘息患者367人を低得点群48人(13.1%)、中得点群182人(49.6%)、高得点群137人(37.3%)に分けた。このうち、高得点群をボディイメージ混乱群、中得点群をボディイメージ正常群として2群間の差の検定を行った。 ① ボディイメージ混乱度と身体感覚増幅度に関する比較  ボディイメージ混乱群は正常群に比べて、BIAT-22値だけでなく、その下位尺度のすべてにおいて得点が高く、分散も大きかった。身体感覚増幅度も、ボディイメージ混乱群の得点が正常群に比べて有意に高かった(両者p=.000)。 ② 喘息特有の諸状況の指標に関する比較  すべての指標において、2群に有意差があった(p=.000)。ボディイメージ混乱群は正常群に比べて、①日常生活のなかで喘息を誘発する増悪因子が多く、②喘息症状が重篤であり、③日常生活上の活動制限や支障が多く、④職場や家庭全般での社会生活への影響が強く、⑤喘息による否定的な感情が強かった。 ③ 基本的背景項目の比較  性別比と年齢には2群間で差はなかった。喘息の既往歴について、ボディイメージ混乱群の患者は罹患年数が長く、入院経験が多く、点滴治療を頻回に受けていた。現在の症状レベルでは、重症度が高く、予約外の受診を必要とするような重症発作が頻回に起こり、日常的な喘息症状を自覚する頻度が高かった。  治療薬の処方状況について、ボディイメージ混乱群の患者は経口ステロイドの投与が多く、インタールの処方者が多かった。  受診および服薬コンプライアンスには、ともに有意差はなかった。ソーシャルサポートに関しては、ボディイメージ混乱群のほうが療養生活の実質的な支援者が少なく、心の拠り所となる支援者も少なかった(重症度、症状自覚、インタール処方、情緒的サポートはp<.01,他項目はp<.05)。 4)喘息患者のボディイメージと身体感覚の感受性、および喘息特有の諸状況との関係性の検討  分析には喘息患者367人のデータを用い、それぞれの順位相関係数を検討した。 ① ボディイメージと身体感覚増幅度との関係  BIAT-22およびその下位尺度とSSASとの組み合わせでは、すべての項目間に正の相関があった(p=.000)。  BIAT-22とその4下位尺度の相関係数は0.71~0.87であり、他の下位尺度と比較して、「身体の離人化」との相関係数だけがやや低値であった。BIAT-22とSSASの相関係数は0.62であった。BIAT-22の4下位尺度とSSASの相関係数は0.37~0.57であった。 ② ボディイメージと喘息特有の諸状況の指標との関係  BIAT-22およびその下位尺度、SSAS、喘息特有の状況指標との組み合わせについても、すべての項目間で正の相関が認められた(p=.000)。  喘息特有の状況指標とSSASの相関係数は0.43~0.53であり、状況指標とBIAT-22は0.50~0.63であった。状況指標のうち、「喘息の増悪因子」だけはBIAT-22よりSSASとの相関のほうが高かったが、その他の指標はSSASよりBIAT-22との相関が高かった。  状況指標とBIAT-22の4下位尺度について、相関係数の値に下位尺度間でばらつきがあり、関係の強さに特定の順序性が認められた。4下位尺度のうち、「身体コントロール感の低下」が5指標ともに最も高値であった。次に高値であったのは「身体カセクシス」であった。続いては「身体尊重の低下」であった。「身体の離人化」の値は他の3つの下位尺度より全般に低値で、値の差も小さかった。  状況指標のうち、BIAT-22の下位尺度との関係が全般的に最も強かったのは「感情面」であった。次に「社会活動の制限」が続き、その次には「喘息症状」と「活動の制限や困難」がほぼ同程度の値であった。「喘息の増悪因子」はやや低値であった。 5.考察  本研究において、喘息患者のボディイメージは非喘息者よりも障害されていることが確認され、喘息はボディイメージの病いでもあるとの結論を得た。また、喘息患者の抱えるボディイメージの主要な問題は予測通り「身体コントロール感の低下」や「身体カセクシス」といった問題ではあったが、「身体尊重の低下」や「身体の離人化」の症状も喘息患者に起こりうる問題であり、注意を要することが確認された。  また、同じ喘息であってもボディイメージ混乱を起こしている人と起こしていない人がおり、それらの比較から、身体感覚増幅度をはじめ、喘息特有に生じる諸状況や、いくつかの基本的背景の項目について、ボディイメージ混乱患者には以下のような特徴があることが示された。  基本的背景に関しては、ボディイメージ混乱群は正常群に比べて、①罹患年数が長く、入院経験が多く、点滴治療を頻回に受けている、②医師の判断による重症度が高く、予約外の受診を必要とするような重症発作が頻回に起こり、日常的な喘息症状に関してもそれを自覚する頻度が高い、③経口ステロイドの投与割合が高く、インタールの処方者が多い、④療養生活の実質的な支援者が少なく、心の拠り所となる支援者も少ない、という特徴があった。また、個人の身体感覚増幅度は非喘息者と喘息患者とで違いはなかったが、喘息患者の身体感覚増幅度とボディイメージ混乱度には中程度の相関関係があり、喘息に罹患した場合、もともとの身体感覚増幅度が高い患者ほどボディイメージ混乱を生じやすいのではないかと考えられた。  状況指標との関係から見ると、ボディイメージ混乱度の高い患者は、喘息が誘発する好ましくない諸状況の発生率やその程度がことごとく高かった。具体的には、①日常生活のなかで喘息発作を誘発する増悪因子が多く、②喘息症状が重症で、③日常生活活動上の支障が多く、④職場などでの社会生活への影響が強く、⑤喘息による否定的な感情も強い、という状況にあった。  関係の強さから言えば、ボディイメージの問題には、喘息に誘発される心理的問題の指標である「感情面」が最も強い関係性を示し、社会生活に対する喘息の影響を示す「社会活動の制限」がその次に強い関係性を示した。つづいて、喘息による身体状況への直接の影響を示す「喘息症状」や「活動の制限や困難」といった指標が続き、最後に、身体と環境との関係性を示す「喘息の増悪因子」の順となっていた。  以上のことより、ボディイメージに混乱を来たした喘息患者へのアプローチとして、まず「感情面」の重要性から、カウンセリングや認知療法などのような感情あるいは感情の基盤となる認知のあり方へ直接アプローチする方法が提案できるだろう。また、社会生活に対する喘息の悪影響を示す「社会活動の制限」の指標が「喘息症状」や「活動の制限や困難」といった直接的な身体状況の指標よりも強くボディイメージ混乱度に関係していたという事実は、ボディイメージの問題が単に症状コントロールや処方状況の改善だけで対処できる問題ではないことを示唆している。そのことから導かれる看護介入としては、社会生活の調整や、療養上の道具的、情緒的両面におけるサポーターの確保、そして社会的自己や他者との関係性の在りようについての気づきを促すアプローチの必要性が認識される。さらに、身体と環境との関係性の指標である「喘息の増悪因子」の関与からは、自律訓練法やボディワークのような身体感覚へ直接働きかけるアプローチの有効性が示唆されたと考えられる。 6.看護学への適用と今後の課題  喘息患者の身体感覚やボディイメージといった問題は、医学的な客観的指標と違って、患者自身だけが感じているきわめて主観的で個別的な要素ではあるが、慢性疾患患者の医療の目標とされる個人の主観的健康やQOLの向上という観点からすればとても重要な視点であり、看護学の貢献も期待されるテーマと言える。  これまで、病者のボディイメージに関して、こういった慢性疾患患者の感じている「日常的な身体のコントロール不全感」や「身体状況による生活全般への支障の問題」という文脈からの検討はあまりされてこなかったが、本研究で喘息患者のボディイメージの実態について検討したことによって、ボディイメージという看護上の重要概念について新しい視点を提案することができ、それに対する看護介入の方向性と可能性について探求することができた。  今回の分析では、喘息患者のボディイメージ混乱に関与する因子として、身体感覚増幅度をはじめ、喘息特有に生じる諸状況や、いくつかの基本的背景の項目についての患者の特徴を確認したが、そういった特異的な状況や特性があるために患者のボディイメージが混乱しやすいのか、逆にボディイメージの混乱がそれらの状況や特性を二次的に引き起こすのかの因果関係については検討できておらず、喘息患者のボディイメージ混乱のメカニズムを明らかにしていくためには、まずそのことの解明が今後の課題となろう。  また、喘息患者に生じるボディイメージ混乱の4つの側面には、顕在化しやすさにおいてある一定の傾向があることが確認されたが、それが単なる現象の発生率や発生頻度の差から生じたものなのか、それともひとりの患者に関してまず「身体コントロール感の低下」や「身体カセクシス」の症状が現れ、悪化すれば「身体尊重の低下」を併発し、最後には「身体の離人化」まで発現するというような段階的なプロセスを裏づけるものなのかに関しては検討できていない。今後は、ボディイメージ混乱が生じた患者について、その内容や程度の変化を調査するなどの縦断的アプローチを試みて、その点について明らかにしていく必要があろう。  また、今回の知見をもとにボディイメージ混乱の患者に対する看護介入の方向性について検討を行い、①感情面へのアプローチ、②社会生活の調整と社会的自己の振り返りという視点からのアプローチ、③身体感覚へ直接働きかけるアプローチといった3つの側面から考察を行ったが、ここで示した介入方法はいずれも専門的な知識と訓練を必要とする方法であり、喘息患者に対する一般的な看護実践の場ですぐに活用することは難しいかもしれない。今後は、本知見を踏まえて、一般的な臨床の場で活用することのできる介入プログラムを開発するとともに、その介入プログラムの評価研究を進めていくことが課題と言えよう。
Abstract-Alternative: 1.Objectives This study aims at investigating the characteristics of body image disturbance in asthma patients as well as seemingly relevant somatosensory sensitivity, and asthma-induced body, mental and life conditions to examine their relationships in order to understand subjective health and QOL of adult bronchial asthma patients for their care. 2.Framework of the Study Problems in patient's body image, i.e. "Body image disturbance" is operatively defined as sensory confusions and predisposition to cognitive appraisal which are highly likely to cause individual health problems. It includes 5 sub-concepts of "Body-cathexis", "Low body-control", "Low body-esteem", "Somatic boundary disturbance", and "Body-depersonalization". "Body-cathexis" means extraordinary strong concerns and interest toward the body, because of which a person feel incongruity and anxiety. "Low body-control" is the confusion caused by unstable body conditions, consequently causing distrust in uniformity and constancy of the body. "Low body-esteem" is the dissatisfaction with body conditions and the loss of feeling that the body is invaluable. "Somatic boundary disturbance" is the elevated permeability between one's body and the surroundings with an abnormal feeling of having unstable or indefinite boundary. "Body-depersonalization" is the feeling that the whole body or part of the body does not belong to oneself and there is something incongruous or foreign, accompanied by abnormal sensations. Among the 5 sub-concepts, "Somatic boundary disturbance" was excluded from the framework of this study since it could not be assumed as a body image problem of asthma patients. 3.Study Method A cross-sectional survey was conducted by using a self-report questionnaire to adult asthma patients who were visiting physicians (Survey 1). A similar survey was conducted for non-asthmatics (Survey 2). Based on the comparison of these two groups, body image of asthma patients was investigated. 1)Scale The questionnaire for Survey 1 consisted of basic background items, "Somatosensory Amplification Scale (SSAS)", "Body Image Assessment Tool: 22 item version (BIAT-22)", and "Indices of Asthma-induced Body, Mental and Life Conditions". The questionnaire for Survey 2 consisted of "SSAS" and "BIAT-22". SSAS is a self-report scale with 10 items, and the higher score means higher somatosensory amplification. Somatosensory amplification is "a tendency to be highly sensitive to relatively weak, infrequent visceral or somatic sensations which are normally paid little attention to, become inquisitive with excessive caution and vigilance, and consider such sensations pathological". BIAT-22 is a self-report scale to measure "Body image disturbance" with 4 subscales of (i) Body-cathexis (7 items), (ii) Body-depersonalization (4 item), (iii) Low body-control (5 items), and (iv) Low body-esteem (6 items). The higher score indicates more disturbed body image. To measure asthma-induced body, mental, and life conditions, "Asthma Health Questionnaire-33, Japan (AHQ-33J)" was partially used. AHQ-33J was developed as a self-report scale to measure asthma-specific QOL, consisting of 7 subscales of (i) Asthma symptoms (8 items), (ii) Emotion (8 items), (iii) Daily activity (3 items), (iv) Asthma aggravating factors (8 items), (v) Social activity (4 items), (vi) Economics (1 item), and (vii) Global QOL (1 item). The higher score indicates lower self-rating of QOL. In this study, (i) and (iii) are used as indices for asthma-specific body conditions, (iv) for the relationship between the body and the surroundings, (v) for social life, and (ii) for mental conditions. 2)Data Collection In Survey 1, doctors at cooperating institutions explained about the survey to their outpatients on their visits, and asked them to participate. Only when the patient consented, the doctor filled in some part of the background information in reference to the patient's medical history, and gave the patient a set of the survey request letter, the questionnaire-BA, and an envelope with return postage. The patient brought it home to fill in and mailed back to the investigator. In Survey 2, with cooperation of multiple institutions and individuals, the institutional staff and the family members were asked to participate. When they consented, they received a set of the survey request letter, the questionnaire-C, and an envelope with return postage to mail back to the investigator. 3)Analysis A statistical program, SPSS 11.5 was used. (i) Firstly, based on descriptive statistics and frequency tables, characteristic basic background of asthma patients was investigated. (ii) Secondly, the scores of SSAS and BIAT-22 were statistically tested between the asthma patient group and the non-asthmatic group to compare the degree of somatosensory amplification and body image disturbance. (iii) Thirdly, standard scores were set for BIAT-22 to divide the asthma patients into the body image disturbance group and the normal body image group. The scores of BIAT-22, SASS, indices of asthma-induced conditions, and basic background were statistically tested between these two groups to find characteristics of the patients with higher body image disturbance. (iv) Finally, rank correlation coefficients were calculated and compared among the items of BIAT-22, SSAS, and indices of asthma-induced conditions to examine characteristics of body image disturbance in asthma patients as well as the relationships among the items. 4)Ethical considerations The surveys were conducted anonymously, considering the patient's privacy and anonymity. The participants were assured that the data would be used only for the study and discarded immediately after analysis. In Survey 1, to make sure that patients would not feel the request for participation obligatory, it was explained orally and in a written form that the patient was free to make a final decision on returning the completed questionnaire, there was no need to tell the doctor whether the questionnaire was sent back, and participation would not affect medical care to be provided or the relationship with the doctor. Similar considerations were given for Survey 2 so that potential participants would not feel pressure from their supervisors, co-workers, or family members. This study was approved by the Research Ethics Committee of St. Luke's College of Nursing in 2002 prior to the study implementation. 4.Results In Survey 1, the questionnaires were distributed to 964 individuals at 11 institutions, and 403 responded (41.8% collected). After the questionnaires with incomplete answers were excluded, data from 367 individuals were selected for analysis. In Survey 2, 6 institutions and 14 individuals were asked to participate, and 617 individuals responded (780 sets distributed, 79.1% collected). Data from 595 individuals were selected for analysis. 1)Comparison between the asthma patient group and the control group Among 595 individuals in the control group, the subjects were randomly selected after matching age and sex with the asthma patient group, however, there was not enough number of subjects over 60 years old. To avoid the age bias, only the individuals at 60 years old or younger were selected for comparison between the groups. Total of 203 asthma patients (97 males and 106 females) and 210 controls (104 males and 106 females) were available for analysis. A.Somatosensory amplification After the confirmation of normality and reliability coefficient of SASS scores, two-way layout ANOVA was performed by group (classified by disease existence) and sex with age as a covariate. Comparison was made among the groups of (i) those who are not visiting hospitals for any types of diseases, (ii) those who are visiting hospitals for diseases except asthma, (iii) those who are visiting hospitals only for asthma, and (iv) those who are visiting hospitals for asthma and other diseases. As a result, no interaction in group and sex was found. The main effects of group and age were not significant while the main effect of sex was significant (p=.000). Somatosensory amplification did not show any difference by having or not having asthma and other diseases. It was higher in women than in men, but was not affected by age. B.Body image disturbance Mann-Whitteney U test was performed for BIAT-22 scores of the abovementioned group (i) and (iii). Body image disturbance of asthma patients was higher than that of non-asthmatics (p=.000), and the similar results were obtained with other 4 subscales (p<.01). 2)Comparison of the body image disturbance group and the normal body image group Standard scores were determined, based on the data from 439 individuals in the abovementioned group (i) out of 595 non-asthmatics. According to the score distribution in reference to the tentative standard sores of BIAT-22, i.e. [average±SD] for males and females respectively, 367 asthma patients were classified into the low score group (n=48, 13.1%), the middle score group (n=182, 49.6%), and the high score group (n=137, 37.3%). The high score group was designated as the body image disturbance group, while the middle score group was regarded as the normal body image group to test these two groups statistically. A.Comparison in body image disturbance and somatosensory amplification There was significant difference between the two groups not only in BIAT-22 scores but also in the scores of all subscales (p=.000). Somatosensory amplification was also significantly higher in the body image disturbance group than in the normal body image group (p=.000) b.Comparison in indices of asthma-induced conditions There was significant difference between the two groups in all indices (p=.000). Compared with the normal body image group, the body image disturbance group had (i) more asthma aggravating factors which trigger asthma attacks in daily life, (ii) severer asthma symptoms, (iii) greater limitation and obstacles in daily life, (iv) more influence on social life at workplace and home, and (v) stronger negative emotions due to asthma. C.Comparison in basic background items There was no difference in sex ratio and age between the two groups. Regarding the medical history of asthma, the body image disturbance group had longer years with asthma, more experience of hospitalization, and more frequent intravenous drip. Regarding the severity, the level of current symptoms was more serious, severe asthma attacks which require a hospital visit without an appointment occurred frequently, and the patients suffered from asthma symptoms more frequently in daily life. In terms of medication, the body image disturbance group received more oral steroids, and Intal prescription was prevalent. There was no significant difference in both examination and medication compliance. Regarding social support, the body image disturbance group received less practical and emotional support (severity, subjective symptoms, Intal prescription, and emotional support: p<.01; other items: p<.05). 3)Examination of relationships between body image of asthma patient and somatosensory amplification or asthma-induced conditions Data from 367 asthma patients were used to examine the rank correlation coefficients. A.Relationship between body image and somatosensory amplification Positive correlations were found among all items in the combinations of BIAT-22, its subscales, and SSAS (p=.000). The correlation coefficients between BIAT-22 and its 4 subscales were 0.71-0.87. "Body-depersonalization" had slightly lower coefficient than the other subscales. The correlation coefficient between BIAT-22 and SSAS was 0.62. The 4 subscales of BIAT-22 and SSAS had correlation coefficients of 0.37-0.57. b.Relationship between body image and indices of asthma-induced conditions Positive correlations were found among all items in the combinations of BIAT-22, its subscales, SSAS, and indices of asthma-induced conditions (p=.000). The correlation coefficients between indices of asthma-induced conditions and SSAS were 0.43-0.53, while the correlation coefficients between indices of asthma-induced conditions and BIAT-22 were 0.50-0.63. Among the indices of asthma-induced conditions, "Asthma aggravating factors" showed stronger correlation with SSAS than with BIAT-22, but other indices had stronger correlation with BIAT-22. Between the indices of asthma-induced conditions and 4 subscales of BIAT-22, the correlation coefficients differed among the subscales, and there was a certain order in the strength of relationships. Among the 4 subscales, "Low body-control" had the highest coefficient with all 5 indices, followed by "Body-cathexis" and "Low body-esteem". "Body-depersonalization" had generally lower coefficients than the other 3 subscales, and its coefficient values were quite similar. Among indices of asthma-induced conditions, "Emotion" had generally the strongest relationship with the subscales of BIAT-22, followed by "Social activity". Then "Asthma symptoms" and "Daily activity" followed with similar values. "Asthma aggravating factors" had slightly lower coefficient. 5.Conclusions This study found that body image of asthma patients was more disturbed than that of non-asthmatics, therefore, asthma is also a disorder of body image. The main problems of body image in asthma patients, as expected, turned out to be "Low body-control" and "Body-cathexis", however, "Low body-esteem" and "Body-depersonalization" were also confirmed to be potential problems of asthma patients, which requires attention. There were asthma patients with or without body image disturbance, and from the comparison of these two groups, some characteristics were found in the body image disturbance group in terms of somatosensory amplification, asthma-induced conditions, and basic background items as described below. Regarding basic background, compared with the normal body image group, the body image disturbance group (i) had longer years with asthma, more experience of hospitalization, and more frequent intravenous drip, (ii) had severer symptoms identified by the doctor, experienced more frequent severe asthma attacks which require a hospital visit without an appointment, and suffered from asthma symptoms more often in daily life, (iii) received more oral steroids, particularly Intal prescription, and (iv) had fewer helpers in daily life under medical care and less emotional support. There was no difference in somatosensory amplification between asthma patients and non-asthmatics, however, the moderate level of correlation was found between somatosensory amplification and body image disturbance in asthma patients. This suggests that the patients with inherent higher somatosensory amplification are prone to body image disturbance. In relation to asthma-induced conditions, the patients with higher body image disturbance showed greater occurrence and higher level of undesirable conditions which trigger asthma attacks, i.e. (i) a number of asthma aggravating factors were found in daily life ("Asthma aggravating factors"), (ii) asthma symptoms were severe ("Asthma symptoms"), (iii) there were many obstacles in daily activity ("Daily activity"), (iv) social life was considerably influenced at workplaces ("Social activity"), (v) the patients felt strong negative emotions ("Emotion"). According to the strength of relationship, "Emotion", the index of asthma-induced mental problems, had the strongest relationship with body image disturbance, followed by "Social activity", the index of asthma influence on social life. Then, "Asthma symptoms" and "Daily activity" which indicate direct asthma influence on body conditions, and finally "Asthma aggravating factors" which shows relationship between body and environment, followed. In conclusion, considering that "Emotion" is an important aspect, the methods such as counseling and cognitive therapy, which directly work on emotions or perception as the basis of emotions, could be recommended as an approach to asthma patients with body image disturbance. Also, as "Social activity", the index of asthma influence on social life, was more strongly related with body image disturbance than the indices of body conditions such as "Asthma symptoms" and "Daily activity", it indicates that body image disturbance cannot be treated only by symptom control and medication changes. Therefore, medical care for asthma patients should take an approach to coordinate social activity, secure practical and emotional support, and facilitate the patient's understanding of social self as well as relationships with others. In addition, knowing that "Asthma aggravating factors", the index of the relationship between body and environment, is involved, the methods such as autogenic training and body work which influence directly on somatic sense would be effective.
Official announcement place: Kaoru Fujisaki,Kazuhiko Fujisaki.The Current Condition of Adult Asthma Patients: Health Status, Symptoms Management, and Antiasthmatic Prescription.家庭医療11(2):10-20(2005.8)
Description: 聖路加看護大学大学院看護学研究科博士後期課程
URI: http://hdl.handle.net/10285/1269
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